【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
二階堂氏はにやりと不気味に笑った。愛娘が深夜に外出していたことを知っていたようだ。彼の背後にいる唐澤さんは口をあわあわとさせている。


「ああ。咲希には社会勉強をさせているところだ。雅くんと共に過ごしている。いずれは籍を入れるのだからね、今のうちから雅くんの生活を知っておいた方がいいだろうと思ってね。親心だよ、親心」


社会勉強ってなに。雅さんに子守りを押しつけてるだけじゃないの。


「でも逆に雅副社長の生活に嫌気が差して、結婚したくなくなることも考えられるのではないですか?」
「それはない。万一、雅くんが咲希と結婚しなかったなら、業務提携はナシだ。雅副社長もそこは知っている」


私と二階堂氏の間にピリピリとした空気が流れる。いまにも稲妻が落ちそうなほど。それを察知した唐澤さんがパン!と手を叩いた。


「さすがご熱心でいらっしゃいますねーっ!」と唐澤さんが合いの手を入れ、さささどうぞっ!と二階堂氏をエレベーターに誘導した。扉が閉まる瞬間、二階堂氏は鼻を鳴らした。私は深々とお辞儀をしてからその場を去った。


でもいい。唐澤さんから婚約者って言葉を聞いて、ちょっと自信がついた。


*―*―*


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