【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
「だから少し、考えてる。雅さんとのこと」
「じゃあ、僕にもどってくればいいさ」
「でも」
「僕は紬だけだ。今回のことでそれがよくわかった。その御曹司には財力では勝てないけど、紬を全力で守るし、幸せにするから。僕と結婚してほしい」
真剣な眼差しに射抜かれそうになる。
こんなに熱いひとだった?
「……ちょっと考えさせて」
橘さんは、そうだね、と優しくうなずいてくれた。
*―*―*
私は自宅にもどると、ドスンと椅子に腰掛けた。目の前には姿見、疲れた顔の冴えない女が映っている。胸元で光る石たちがあまりにもきれいに輝いていて、ミスマッチだった。
日本を代表するといっても過言ではない不動産会社の御曹司。同じく日本のホテル業界を牽引するホテルオーナーの令嬢。どうみたって、私よりお似合いじゃないか。
そもそも身分違いが違いすぎる。雅さんを支えられるのは一般ピープルの私より、咲希さんなのだ。これから不動産業界を牽引していく雅さんに必要なのは私ではない。
「ふう……」
ため息をつく。私らしくもない。
私が雅さんのためにできること、それは……。
だらりと下げていた両手を首裏に回す。
指先でネックレスのチェーンを探り、留め具で指先を止める。
ぱちり。
胸元で揺れる石が鏡の中で輝く。
私はそれをおろすと、ごみ箱の中に落とした。