【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
翌日、金曜日。私はひとつの決心をしてオフィスに向かった。

今日は薄曇りで首もとが寒い。ストールかスカーフを巻いてくればよかったと後悔した。

あれ?

エントランスの自動ドアの前、淡いブルーのスーツ姿の女性がこちらを向いて立っていた。キョロキョロと視線を動かし、誰かを探している。社員ならばセキュリティゲートを抜けてロビーにいたほうが寒くないから、おそらくうちの社員ではない誰か、ということになる。


ビルに近づくにつれ、彼女の姿が大きくなる。向こうは私と目が合うと、少し口を開いた。私を探していた……? 


「おはようございます。失礼ですが開発2課の藍本さん、ですか?」
「はい。どちらさ……あっ!」


私が声を上げると彼女は深々と頭を下げた。
橘さんの彼女。正確には元彼女?

突然申し訳ありません、と頭を下げたままで言う。出勤してきた社員たちもジロジロと私を見ている。最近注目されることが多く慣れてはきたけど、これ以上有名になっても。


「藍本さんにお願いがあって参りました」
「話なら聞くから、頭を上げて」


私がそう返事をすると彼女はようやく姿勢をもどした。
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