【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
その日、唐澤さんから連絡がきたのは夕方17時を回る頃だった。“咲希さまがお昼寝されました!!!!!”とビックリマークが連なる唐澤さんらしい文面のメールだった。

とうとう来てしまった、最後の時間。
唐澤さんからの連絡を待ちながら仕事していたから、“やっと”という思いと“来てしまった”という思いが交錯する。

席を立って副社長室に向かった。夕刻のエグゼクティブフロアはいつも以上に静かで、いつもより重い空気が流れていた。秘書課のカウンターからは 暮れかかった空がのぞける。窓のない薄暗い通路は処刑台に向かう道にも見えて足取りも重い。三國雅副社長室と刻印されたプレートをじっと眺め、いま一度自分の心に問うた。

雅さんのこと、好き? ……好き。
雅さんのためになりたい? ……もちろん、なりたい。
そのためにはどうするの? ……会社の利益を考えて行動する。
それでどうするの? 私は……。

最終確認、できた。

コンコン。
私はインターフォンをならさずに軽くドアをノックした。かちゃり、とドアのロックが外され、私はそっとドアノブを回した。

隙間から室内が見える。東向きのこの部屋の窓はすでに暮れていた。シーリングライトはつけられておらず、雅さんのデスクのランプだけが点されていた。薄暗い空間に雅さんが逆光気味に浮かび上がる。
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