【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔

でもそんな心配は無用だった。帰り際、私はフロントに立ち寄ったが支払いは雅さんが済ませていた。ついでに昨夜は本当に満室だったのか確認したら、ツインに空きはあったという。

そうありがとう、と返事をしてロビーを出た。自分の眉がひきつるのがわかる。

嘘だった。

ということは、やるためだけに部屋を取ったということ？
やっぱり信用ならない男だ。婚約も冗談だろう。



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週明け、いつもより２時間ほど早めに出勤する。肌を刺す冷たい空気も先週よりはなめらかになった。今日から３月だ。ギリギリ今の時期でよかった。高めのタートルネックのセーターにコーデュロイの細身のパンツを合わせ、薄手のジャケットを羽織った。念のため髪は下ろして首回りを隠す。雅さんが付けたキスマークはまだ残っている。

２５階建ての自社ビル。早いせいか誰もおらず、ヒールの音が壁に響いた。ガラス張りのエレベーターに乗り込む。途中、ビルの隙間から朝日が顔を出して私は襟を正した。今日も１日が始まる。

ポーン。エレベーターは上昇速度を落とし総務部のある７階に止まった。社員の社会保険などの福利厚生から消耗品の発注や印章の管理まで様々な業務を請け負う。なので日中はよく止まるけれど、朝のこの時間には珍しいことだった。