【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
§灯台下暗し
こんな画像……。確かに出来上がったら送る、とは聞いていたけど。
パソコンのモニターに映るのはスケッチ画だ。赤の縦長のライン、膝下から広がる裾、大きく開いた背中は大人っぽいデザインなのに、腰につけられた大きなリボンはかわいらしさも持ち合わせていて。
メモリスティックにしこまれていたのはウイルスでもクイズでもなく、先日訪れた雅さん御用達のサロンで頼んでいたドレスのデザイン画だった。
赤のマーメイド。
このドレスを着た自分を想像して、気持ちがふわっとなる。
あの日、試しに着せてもらったとき、世界が変わった。というと大袈裟だけど、なにかが変わった気がした。自分では絶対似合わないと思っていた真っ赤なドレス、しかもマーメイドの細身のデザイン。でもこれを着たら雅さんの隣を歩いても恥ずかしくないと思えた。
でも……このドレスを着ることはない。
なのになぜ、見せつけるの?
こう、どうして、人の傷をえぐる真似ができるのか。と唐澤さんのことを恨めしく思う。
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