【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
唐澤さんはしゃがみこんで革靴の上からつま先を押さえている。


「ねえ、ちゃんと説明して。私がわかるように」
「わ……わかりました、わかりましたから。雅副社長はずっと藍本さまを気にかけておられまして」
「それって何なの? 一目惚れって武田さんが」
「私も雅副社長にお仕えする身でもありますが、副社長はとても優秀で素晴らしい方、仕事抜きにしても私は副社長を尊敬し、お慕い申し上げていまして。そんなお方の恋を応援したく、まあ、たまたま入社してたまたま藍本さまと同じ課に配属された武田に藍本さまの動向チェックをお願いしていてですね」
「どうしてそこまで。でも海外にいたんでしょう? 唐澤さんも副社長も」


唐澤さんは涙目になりながら、押さえていたつま先を離して起き上がった。


「年に数回は帰国して本社と打ち合わせなどはありまして。しばらくは、というよりは、ずっと海外事業部で旗振りをするおつもりだったんです。世襲に興味がないらしく。そういうわけにはいかないと、この唐澤も話してはいたんですが説得できず、で。今回、日本にもどる決心をされたのも藍本さまの失恋のおかげ、と申しますか」
「えっ?」
「橘さまと別れたかも、という武田からの情報をお耳に入れたらですね、本社に戻るとおっしゃられて。急遽、本社に雅副社長の部屋を用意して。帰国した翌日だったかと思います、武田が飲みに連れ出したのは」
「それで?」
「“藍本さんつぶれちゃったから、あとよろしく!”と武田から連絡をもらって。それを雅副社長にお伝えしたら車で藍本さまのマンションへ先回りして……という流れでございます」
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