【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
翌朝、雅副社長と咲希さんを迎えにいく。ブライアントホテルの最上階、スイートルーム。ここがふたりの仮の巣だ。ベルを鳴らすと、ドアを開けたのは咲希さんだった。
すけすけのネグリジェ。なに、これ、雅副社長の趣味?
いや……。雅副社長は黒の総レースが好みだったはず。
それとも趣味を変えた、とか?
いやいやいや、雅副社長はそんなことはしない。あんなに藍本さん一筋なんだから。咲希さんに自分の好みの下着を着せるとかありえない。
っていうか、なに。オレへのハニートラップじゃあるまいし。
目のやり処に困る。見たいけど、必死に視線をそらした。
「さ、咲希さまっ! お支度は」
「どっちのワンピースがいいか、迷っていて」
「雅副社長に選んでいただけばよろしいかとっ!」
「雅さん、どっちもカワイイから好きな方を着ればいいって」
「さようでございますか……」
奥の方で、雅副社長が、唐澤が選んでやれ、と叫んでいるので中に入る。
このスイートルームは部屋が4つあって、ツインの寝室が2つ、リビングがひとつ、茶室がひとつある。雅副社長はリビングでネクタイを結んでいた。
「雅副社長、おはようございますっ!」
「悪いな。お前、アパレル関係でバイトしてたんだろ。見立ててやれ」
「はいっ! といいますか、あの目のやり場に困るお支度は……」
「咲希なりの誘惑だろ。どういう風の吹き回しやら」
微笑むボスの眼差しは陽だまりのようにあたたかで、子どもを見守る保護者の視線だ。