【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
ポーン。20階から25階はすぐだった。
扉が開いて中断し、私はほっと胸をなで下ろした。雅さんの骨っぽい右手が名刺ケースをつかんだまま操作パネルの開を押す。左手は私の背中に当てられた。ほら降りて、と低いハスキーでささやかれた。
初めて降りたエグゼクティブフロア。ふかふかの絨毯、色は落ち着いたチャコールグレイ。正面はガラス張りの応接ロビー、観葉植物、両方の壁には大きな風景画。噂には聞いていたが、まるで高級ホテルを思わせるような空間だ。となりにはカウンターデスクがあってその奥は秘書課のようだが、奥で人の気配がするだけで人影は見えなかった。
緊張する私を彼はゆっくりと歩いてエスコートした。正方形のこのビルは中央にエレベーターや給湯室、書庫があって、オフィスがそれらをぐるりと囲む形になっている。各オフィスのドアには上層部の名前が刻まれていて、さらに緊張した。だからなおのこと背中に当たる彼の手が温かくて、頼りたくなる。
「この前はどうも」
「そうじゃなくて。説明して」
「キミは説明が好きだね」
「からかわないで」
「あれから帰れた? 時間があれば送っていけたんだけどあいにくクライアントとの会合があって。大丈夫だったか? あ、ここ。エレベーターから一番遠いんだ。一応新米なんでね」
ドアプレートには三國雅・副社長室と仰々しく刻印されている。
背中に当てられた手が離れ、彼は内ポケットからIDカードを取り出してかざした。ピピという電子音のあと、雅さんはドアを引いた。再び背に手を当て、私を中に入れた。
扉が開いて中断し、私はほっと胸をなで下ろした。雅さんの骨っぽい右手が名刺ケースをつかんだまま操作パネルの開を押す。左手は私の背中に当てられた。ほら降りて、と低いハスキーでささやかれた。
初めて降りたエグゼクティブフロア。ふかふかの絨毯、色は落ち着いたチャコールグレイ。正面はガラス張りの応接ロビー、観葉植物、両方の壁には大きな風景画。噂には聞いていたが、まるで高級ホテルを思わせるような空間だ。となりにはカウンターデスクがあってその奥は秘書課のようだが、奥で人の気配がするだけで人影は見えなかった。
緊張する私を彼はゆっくりと歩いてエスコートした。正方形のこのビルは中央にエレベーターや給湯室、書庫があって、オフィスがそれらをぐるりと囲む形になっている。各オフィスのドアには上層部の名前が刻まれていて、さらに緊張した。だからなおのこと背中に当たる彼の手が温かくて、頼りたくなる。
「この前はどうも」
「そうじゃなくて。説明して」
「キミは説明が好きだね」
「からかわないで」
「あれから帰れた? 時間があれば送っていけたんだけどあいにくクライアントとの会合があって。大丈夫だったか? あ、ここ。エレベーターから一番遠いんだ。一応新米なんでね」
ドアプレートには三國雅・副社長室と仰々しく刻印されている。
背中に当てられた手が離れ、彼は内ポケットからIDカードを取り出してかざした。ピピという電子音のあと、雅さんはドアを引いた。再び背に手を当て、私を中に入れた。