【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
彼が三國雅という副社長であることは間違いなさそうだ。
30畳はありそうな広いオフィス。ガラスの向こうには霞んだ空が見える。木とフレームで構成されたシンプルでありながらデザイン製の高いデスク、手前には応接セット。壁に取り付けられた棚はデスクとお揃いのようで、空のままだ。ダークブラウンで統一された室内は高級感を保ちつつもくつろげる雰囲気がある。
「信じてもらえたようだな。まあ、かけて」
ソファに促され、私は手前の席に腰掛けた。彼は斜め向かいに座ると、上半身を前に傾け膝の上で長い指を組んだ。マッシュレイヤーの髪がさらりと揺れる。
「まずどこから話そうか」
「あなたのこと教えて」
「身長187センチ、体重75キロ。靴のサイズは27。好きな飲み物はコーヒーと牛乳とウォッカ。あ、ウォッカはロックで」
「そうじゃなくて」
「誕生日は4月7日、来月で35になる。父親は三國ホールディングス社長兼グループ総裁の三國玄(みくにげん)、と言えばあとはわかるか」
三國玄。昭和初期から細々と続けてきた不動産業をわずか一代で日本を代表するデベロッパーに成長させた張本人。還暦を迎えるに当たり、そろそろ代替えを、という噂を耳にしたばかりだ。当然世襲は予想される。しかしその息子は海外事業と称して世界を遊び回っていて、ボンボン、なんて揶揄されている、とも。
この人が次期社長兼グループ総裁、か。
どうりで既視感のある人だ。初めて会ったあの日、見覚えがあってもおかしくない。
「わかりました」
「ありがとう。助かるよ婚約してくれると」
「はい?」
「今、わかったって言ったよな?」
「それは跡を継ぐ、っていう話をです。そもそもどうして見ず知らずのあなたと婚約って」
「この年になるといろいろと面倒なんだ。俺にステディな女性がいれば先方もあきらめる。とりあえずフリをしてほしい」
「フリ、ですか?」
「ああ。キミがいいなら本当に婚約しても構わない」
30畳はありそうな広いオフィス。ガラスの向こうには霞んだ空が見える。木とフレームで構成されたシンプルでありながらデザイン製の高いデスク、手前には応接セット。壁に取り付けられた棚はデスクとお揃いのようで、空のままだ。ダークブラウンで統一された室内は高級感を保ちつつもくつろげる雰囲気がある。
「信じてもらえたようだな。まあ、かけて」
ソファに促され、私は手前の席に腰掛けた。彼は斜め向かいに座ると、上半身を前に傾け膝の上で長い指を組んだ。マッシュレイヤーの髪がさらりと揺れる。
「まずどこから話そうか」
「あなたのこと教えて」
「身長187センチ、体重75キロ。靴のサイズは27。好きな飲み物はコーヒーと牛乳とウォッカ。あ、ウォッカはロックで」
「そうじゃなくて」
「誕生日は4月7日、来月で35になる。父親は三國ホールディングス社長兼グループ総裁の三國玄(みくにげん)、と言えばあとはわかるか」
三國玄。昭和初期から細々と続けてきた不動産業をわずか一代で日本を代表するデベロッパーに成長させた張本人。還暦を迎えるに当たり、そろそろ代替えを、という噂を耳にしたばかりだ。当然世襲は予想される。しかしその息子は海外事業と称して世界を遊び回っていて、ボンボン、なんて揶揄されている、とも。
この人が次期社長兼グループ総裁、か。
どうりで既視感のある人だ。初めて会ったあの日、見覚えがあってもおかしくない。
「わかりました」
「ありがとう。助かるよ婚約してくれると」
「はい?」
「今、わかったって言ったよな?」
「それは跡を継ぐ、っていう話をです。そもそもどうして見ず知らずのあなたと婚約って」
「この年になるといろいろと面倒なんだ。俺にステディな女性がいれば先方もあきらめる。とりあえずフリをしてほしい」
「フリ、ですか?」
「ああ。キミがいいなら本当に婚約しても構わない」