【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
ずっと彼はそんな素振りは見せなかった。それは5歳年上の大人の余裕から来るもので、きっと彼なりの人生設計があって。だから私は安心していられた。時期が来ればいつかは、って。
急に胸が早鐘を打つ。手のひらに汗をかいた。緊張してきた。
できるだけ平静を装って私は彼の席に着いた。橘さんが珍しいね、先に来てるなんて、と普通に明るく声をかけた。
でも橘さんはちらりと私を見るとすぐにテーブルに視線をもどした。プロポーズにしては不自然な彼の仕草に違和感を覚えながらも、彼が口を開くのを待った。
座ったまま、橘さんが深く頭を下げた。いよいよ……。
『ごめん、紬。この通りだ。別れてほしい』
『え……?』
まさかの言葉にさっきまでうるさいほどに感じていた鼓動もどこかに消えて無音になる。
彼は淡々と説明を加えた。職場の忘年会、酔った勢いでつい、部下に手を出した。それが命中して今、彼女は妊娠2ヶ月だという。堕胎することも考え、話し合いをした結果、彼はお腹にいる新しい命を消すことはできないという決断にいたり、その女の子と結婚を前提に付き合い始めた、という。
『そう……おめでとう』
『紬にそういうことを言われる立場にない。申し訳ない』
私は暴言を吐くことも、手を挙げることも許されたかもしれない。でもそれをしたところで状況が変わるとも思えず、私はそう言って席を立った。
*―*―*
急に胸が早鐘を打つ。手のひらに汗をかいた。緊張してきた。
できるだけ平静を装って私は彼の席に着いた。橘さんが珍しいね、先に来てるなんて、と普通に明るく声をかけた。
でも橘さんはちらりと私を見るとすぐにテーブルに視線をもどした。プロポーズにしては不自然な彼の仕草に違和感を覚えながらも、彼が口を開くのを待った。
座ったまま、橘さんが深く頭を下げた。いよいよ……。
『ごめん、紬。この通りだ。別れてほしい』
『え……?』
まさかの言葉にさっきまでうるさいほどに感じていた鼓動もどこかに消えて無音になる。
彼は淡々と説明を加えた。職場の忘年会、酔った勢いでつい、部下に手を出した。それが命中して今、彼女は妊娠2ヶ月だという。堕胎することも考え、話し合いをした結果、彼はお腹にいる新しい命を消すことはできないという決断にいたり、その女の子と結婚を前提に付き合い始めた、という。
『そう……おめでとう』
『紬にそういうことを言われる立場にない。申し訳ない』
私は暴言を吐くことも、手を挙げることも許されたかもしれない。でもそれをしたところで状況が変わるとも思えず、私はそう言って席を立った。
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