【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
*―*―*
「ここに雅さんのご両親が眠ってるんですね」
「ああ」
連れてこられたのは郊外にある公営墓地だった。小高い丘の斜面を切り崩し、段々畑のように石塔が並ぶ。
「両親はね、この街で不動産業を営んでいたんだ。戸建やマンションの仲介が主で、細々とね」
「どうしてご両親は?」
「交通事故? 店にダンプカーが突っ込んでね。両親とも即死だった」
「ダンプカー、ですか?」
「運転手は借金返済に困っていた個人経営者でね。うちの両親を殺せば借金をチャラにすると持ちかけられたらしい。当時はバブル期で、両親の持っていた土地を狙っていた悪徳業者が裏で取引していたんだ」
「警察は」
「尻尾が掴めなくて、運転手が有罪判決を受けただけ。両親がいなくなって物件を売り払って店を清算して。子どもだった僕は跡取りを探していた今の両親に引き取られて……」
墓地の入口で汲んできた水を差し、買ってきた花を手向ける。そんな雅さんの横顔は怒りよりも寂しさに覆われていて。
「そのあとはがむしゃらに勉強していい高校に入っていい大学に入って。留学もしたし。いまの両親には感謝してるよ」
「そうだったんですか……」
「それにこうして紬と出会えたし。両親も喜んでると思う」