【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
恥ずかしそうにうつむくと、オレのスーツの袖口をツンと引っ張った。

なに、これ。
萌え萌えちっくな展開。


「じょ、助手席でもいいですか?」
「安全のために後部座席をオススメいたしますが」
「……そう」
「それに私めのような穢らわしい人間が咲希さまのお隣では申し訳なく……」
「……そう」


小さく返事をした咲希さんの瞳がゆらゆらとする。


「あ、あの! 唐澤、安全運転を心掛けますので咲希さまさえよろしければ助手席へ……」


助手席のドアを開けると咲希さんが乗り込む。
オレは運転席に回り込んで、シートベルトを掛けた。

どういう風の吹き回し?
オレの隣に座りたいだなんて。プンプンと怒っていたのに。

エンジンをかけて駐車場を出る。二階堂氏の豪邸まで20分程度だ。フロントガラスには都心の明かりが流れていく。咲希さんは黙ったままだけど、隣にいてくれるのは許してくれたりするんだろうか。

赤信号でブレーキを踏む。なんとなく気まずくて口を開いた


「と、十日ぶりでございますね! 咲希さまはお元気に過ごされましたか」
「はい。唐澤さんは?」
「元気だけが取り柄ですので! あ、でも咲希さまに会えなくて寂しかったです。でも身から出たサビでございます、致し方ないですね……ハハハハハハ」
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