【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
買ってしまおうか……失恋した憂さ晴らしに。結婚するつもりで貯めたお金もある。


「どれか気に入ったものはある?」
「はい。このアクアマリンとダイヤのネックレスが」


それを聞いたスタッフがショーケースの鍵を開けて別のトレーに置いた。ダイヤのまっすぐな輝きとアクアマリンの淡いブルーの光が融合してとてもきれいだ。先ほどのダイヤほど輝きはないが、その柔らかい光で癒してくれそうだ。この色合いならこれからのシーズン、活躍してくれそうだし。

横から伸びてきた雅さんの指がそれをつまみ上げると私の後ろに回った。

下ろしていた髪を横に梳かれ、首筋があらわになる。

彼の指が回され、光の粒はダウンライトを反射させてキラキラと輝きながら鎖骨のあたりに着地した。

首裏で雅さんの長い指がもぞもぞと動き、そのくすぐったさに思わず肩をすくめた。パチンと音がしてようやく指は離れた。

……ドキドキドキドキ。心臓の音が聞こえる。雅さんが離れて、急に私は自分を意識した。なにをこんなに慌てているの? 

スタッフに鏡を出され、そこに映る自分を眺める。顔が真っ赤だ。恥ずかしい。何を意識しているんだろう。私の顔の横で雅さんの顔も映った。鏡越しに目が合う。艶やかな瞳、耳元でささやかれた低い声。


「似合う」
「ありがとう……ござい、ます」


落ち着け、落ち着け、と頭の中で唱えて鏡の中で光る石を見つめる。きっとこれも何かの縁だ、買おう、とスタッフの姿を探した。
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