【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
結局、会社にはもどらず、自宅のあるマンションまで送ってもらった。雅さんは車を路肩に停め、ハザードランプを点滅させる。私はシートベルトを外し、ドアに手をかけたときだった。
首のあたりに指が触れた。わずかにハイネックのニットがつれる。シートにネックレスが絡まったのかと襟元をみると、雅さんがネックレスのチェーンに指をかけていた。
「雅さん……?」
彼は左手を助手席のシートにあて、運転席から身を乗り出している。
至近距離で雅さんの端正な顔がハザードランプに照らされている。暗い中でも彼が鋭い眼光を私に向けているのはわかった。
彼の息が耳や首にかかる。
ランプの点滅する機械音だけが車内に響く。
さらに彼の顔か近づいた。わずか数センチ。
思わず後ろに下がる。
でも雅さんは指を引いてチェーンを張り詰めさせた。これ以上動けば、ネックレスのチェーンが切れてしまうだろう。チェーンはピンと張っている。
わずかに首を傾けながら雅さんの顔がこちらに動いた。私はもう下がれない。
ちゅ。
触れるだけのキス。
かと思いきや、わたしの唇を熱いものが割って侵入してきた。抗えず受け入れると彼はさらに私の中をかき乱した。
芯が疼いた……のは認める。けれど心が奪われたわけではない。
動けないのはネックレスのせいだ。熱い息がもれて車内に充満していく。
しばらくして唇は離れ、ネックレスからも指は離れた。解放されても目の前には雅さんの顔。意地悪に笑っている。
「な、なにするの!」
「キス」
「質問変える。どうしてこんなキス……」
「こんなってどんな?」
「ど、どんなって……」
「この前はもっと激しいのをしたんだけどね。キミからも積極的なキス」
再び雅さんの顔が近づいて、今度は触れるだけのキスをした。それでようやく解放された。
*―*―*