【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
§まわりから固める罠
翌朝。頭の中はふわふわとしていた。暖かな春の日差しのせいだと思いたいけれど。
揺れる電車の中で、つい、思い出してしまう。降りる寸前、ネックレスで首を縫い止められ、動けなくなった私に雅さんはキスをした。しかも、熱を帯びた大人のキス。
あんなキス、反則だ。いくらアメリカ帰りのコミュニケーションの延長だとしても行き過ぎだ。
会社に着いてセキュリティーゲートを抜ける。出勤してきた社員たちの波がエレベーターホールに押し寄せる。なんとなく視線を感じる。今日もハイネックのニットを着てきたけどこの陽気に合わなかったのかもしれない。エレベーターに乗った後も前に立っていた女性がちらりと振り返って私を見て、隣の女性に肘で合図をしていた。途中彼女たちは降りて、こそこそ言い合いながら扉の向こうに消えた。
20階のオフィスに入ると、武田さんが私の席に寄ってきた。いつも明るく元気な彼女だけど、今朝はなおのこと明るい。いや、明るいを通り越してはしゃいでいる。
「藍本さん、噂になってますよ」
「え?」
「雅副社長と車デートって」
「え……ええっ?」
ニクいですねぇ、と武田さんは私の横に並び、肘鉄をした。
「デートなんて。そんなことしてない」
「証拠写真もありますよ。ほら」
彼女は手にしていたスマホを私に見せた。濃紺のセダンとドアに手をかける女性。紛れもなく、雅さんの車に乗り込む私の姿だった。
揺れる電車の中で、つい、思い出してしまう。降りる寸前、ネックレスで首を縫い止められ、動けなくなった私に雅さんはキスをした。しかも、熱を帯びた大人のキス。
あんなキス、反則だ。いくらアメリカ帰りのコミュニケーションの延長だとしても行き過ぎだ。
会社に着いてセキュリティーゲートを抜ける。出勤してきた社員たちの波がエレベーターホールに押し寄せる。なんとなく視線を感じる。今日もハイネックのニットを着てきたけどこの陽気に合わなかったのかもしれない。エレベーターに乗った後も前に立っていた女性がちらりと振り返って私を見て、隣の女性に肘で合図をしていた。途中彼女たちは降りて、こそこそ言い合いながら扉の向こうに消えた。
20階のオフィスに入ると、武田さんが私の席に寄ってきた。いつも明るく元気な彼女だけど、今朝はなおのこと明るい。いや、明るいを通り越してはしゃいでいる。
「藍本さん、噂になってますよ」
「え?」
「雅副社長と車デートって」
「え……ええっ?」
ニクいですねぇ、と武田さんは私の横に並び、肘鉄をした。
「デートなんて。そんなことしてない」
「証拠写真もありますよ。ほら」
彼女は手にしていたスマホを私に見せた。濃紺のセダンとドアに手をかける女性。紛れもなく、雅さんの車に乗り込む私の姿だった。