【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
プルルルル……。私の鞄の中で電子音が流れる。着信だ。

その音に橘さんは動きを止めた。ふたりとも我に返り、気まずさに目をそらす。私は橘さんの手をすり抜けてスマホを取り出した。

相手は雅さん。出るかどうか迷ったけど、出なければ何回でもしつこく掛けてきそうだ。しかたなく出る。


「ハニー。エントランス解除してくれないか。あと部屋番号はいくつだ?」
「えっ! 下にいるんですか?」
「婚約者がもう一度会いに来たっていうのにつれないな。教えないなら今から総務部に電話してはキミの住所を調べるけど?」
「わかりました! いまドアを開けます。部屋番号は503です」


どうしてもどってくるんだろう。こんなときに限って。


「どうしたの」
「ちょっと。会社の上司が来るから。橘さんも今日のところは帰って」
「上司って?」
「海外帰りのちょっと変わったひと」


ふうん、と橘さんは不思議そうな顔をした。会社の上司が部下の部屋に来るのだから。

ドアフォンの鳴る音がして私は玄関に向かった。まだエントランスのドアを解除してないのに。住人の誰かと一緒に入ったのかもしれない。仕方なく私は玄関にいってドアを開いた。優しい顔の雅さんがいた。

でもわずかに眉がひきってる?


「どうしたんですか?」
「もう一度ハニーの顔が見たくなったからね。ん? 紳士ものの靴のようだけど? さっきの挙動不審の理由はこれ?」


途端に雅さんは顔を険しくした。雅さんは靴を脱ぐと私の横ををすり抜けてスタスタと私の部屋へ入っていった。荷物を手にしていた橘さんが雅さんの存在に気づいた。驚いた顔をしている。
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