【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
§副社長の基準がわかりません
翌朝、出勤するとさらに人の目を感じた。あからさまに指をさし、ひそひそと噂をする。
“副社長の婚約者って、ほら、あのひと”
“えー、なんか普通じゃん? あれなら私のほうが”
という私の容姿に関して、と。
“再開発プロジェクトをやめさせたのは女だって噂”
“あんなのが趣味なの。よりどりみどりだろ、あの金持ちイケメン長身なら”
“美女に飽きたんだろ。毎日大トロ食ってたらたまにはイワシの缶詰が食べたくなる”
という副社長の女の趣味、の話で。
どちらにしても憶測だ。なんの根拠もない。まったくのデタラメだ。しかも車デートから婚約者に飛躍しているし。
そこそこ名の通る大企業でも勤めるひとたちの中身はいたって普通なのかも、と思いつつ、普通で悪かったわね!、とか、イワシの缶詰だって美味しいんだから!、と心の中で突っ込んでみる。
しかし、こんなに噂になってしまって、雅さん人気を肌で感じるけれど、婚約者のフリが解除になったら、私はどう噂されるんだろう。
“あのひと、ふられたって! やっぱりね!”、とか、“やりあきたんだろ、きっと”、とか言われるんだろうか。そしたら私はこの会社に居残れるんだろうか。そっちの方が心配だ。
20階の開発事業部につくと、唐澤さんがオフィスの前で立っていた。濃いグレーのスーツにスカイブルーのネクタイ、淡いブルーのシャツ。
「おっはようこざいまーす! あなたのために毎日がんばる唐澤ですっ!」
満面の笑みで迎えられた。あまりのテンションの高さに爽やかな服装が霞んでしまう。彼は大きな紙袋を手にしていた。
“副社長の婚約者って、ほら、あのひと”
“えー、なんか普通じゃん? あれなら私のほうが”
という私の容姿に関して、と。
“再開発プロジェクトをやめさせたのは女だって噂”
“あんなのが趣味なの。よりどりみどりだろ、あの金持ちイケメン長身なら”
“美女に飽きたんだろ。毎日大トロ食ってたらたまにはイワシの缶詰が食べたくなる”
という副社長の女の趣味、の話で。
どちらにしても憶測だ。なんの根拠もない。まったくのデタラメだ。しかも車デートから婚約者に飛躍しているし。
そこそこ名の通る大企業でも勤めるひとたちの中身はいたって普通なのかも、と思いつつ、普通で悪かったわね!、とか、イワシの缶詰だって美味しいんだから!、と心の中で突っ込んでみる。
しかし、こんなに噂になってしまって、雅さん人気を肌で感じるけれど、婚約者のフリが解除になったら、私はどう噂されるんだろう。
“あのひと、ふられたって! やっぱりね!”、とか、“やりあきたんだろ、きっと”、とか言われるんだろうか。そしたら私はこの会社に居残れるんだろうか。そっちの方が心配だ。
20階の開発事業部につくと、唐澤さんがオフィスの前で立っていた。濃いグレーのスーツにスカイブルーのネクタイ、淡いブルーのシャツ。
「おっはようこざいまーす! あなたのために毎日がんばる唐澤ですっ!」
満面の笑みで迎えられた。あまりのテンションの高さに爽やかな服装が霞んでしまう。彼は大きな紙袋を手にしていた。