【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔

「藍本さまっ！　雅副社長から預かってきました！」
「ちょ、静にして」
「今夜、鳳の会懇親会でお召しいただきたいスーツでございます！　お見立てしたところ、藍本さまは９号だと丈が短くて１１号だと肩が落ちそうなのでこの唐澤が若干補正いたしましたっ！　試着されてウエストが緩ければこの唐澤が責任もって直しますんで着用したまま副社長室までお越しください！！」


唐澤さんの言っていることは当たっている。身長１６０センチの私は１１号が合ってるのだけれど肩やウエストが緩いことがしばしばだ。このひと、なに。見ただけで女性のサイズを把握してしまうの？　しかも補正までできるなんて。

そんなことより、みんなの前で私のサイズをバラして。
顔が熱くなる。ブラのカップやスリーサイズでなくてよかったけど。


「あ、胸の補正は今からだと難しいのでパッドで調整してください！　藍本さまのサイズだとたぶん浮くと思うので。え？、あ、なにか……痛ーっ！！」


パンプスのヒールで唐澤さんの靴を遠慮なく踏んづけ、紙袋を預かった。聞いていたひとたちがクスクスと笑っている。唐澤さんはどうしてこんな仕打ちを受けたのかわからないようで、怒られた子犬のような顔でエレベーターに乗り込んでいった。悪い人ではないんだろうけど、デリカシーに欠けるひとだ。

それを見ていた武田さんが挨拶をして寄ってくる。


「それ、最近話題になってるアメリカのブランドの服じゃないですか？」
「そうなの？」
「新進気鋭のクリエイターたちがたちあげたブランドとかで。海外組の雅副社長はやっぱり違いますね」