【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
コサージュを差したあとの雅さんの指はおもむろに私の首筋に向かった。ネックレスのチェーンをもてあそび、うなじをなぞる。雅さんの指から与えられた小さな刺激で全身の皮膚が震えた。
「後れ毛がそそるね。わざと?」
そういえば彼に抱かれてキスマークをつけられてから、ずっと髪を下ろしたままだった。
ぞくぞくする体をどうにか押さえたくて、雅さんに目で懇願する。彼の視線は私の鎖骨のあたりを見下ろしていた。
「ハニー、キスマークは?」
「見えるところはコンシーラーで隠してきました」
「別によかったのに。この女性は俺のものだって示せるからね」
「でもそんなことしたら」
「キミはイヤか? 俺の溺愛の婚約者でいること。できあいって、出来合いの総菜の出来合いじゃなくて、溺れる愛のほう」
溺愛。そんな言葉は無縁で生きてきたし、これからもないと思っていた。もちろん、いずれは誰かと結婚して赤ちゃんを産んで、我が子を大切にするという意味の溺愛はあるだろうと想像はしていたけど。
赤ちゃんと私と、その隣には……橘さん。
きゅうっと胸が痛くなる。昨日橘さんと会ったから余計に思い出してしまう。何があっても紬を手放すべきじゃなかったなんて。
トントンと背中をあやすように叩かれ、雅さんは外へと私を促した。待たせていたタクシーに乗り込み、都内のホテルに向かう。方向が違うから今日は一番星は見えなかった。
「後れ毛がそそるね。わざと?」
そういえば彼に抱かれてキスマークをつけられてから、ずっと髪を下ろしたままだった。
ぞくぞくする体をどうにか押さえたくて、雅さんに目で懇願する。彼の視線は私の鎖骨のあたりを見下ろしていた。
「ハニー、キスマークは?」
「見えるところはコンシーラーで隠してきました」
「別によかったのに。この女性は俺のものだって示せるからね」
「でもそんなことしたら」
「キミはイヤか? 俺の溺愛の婚約者でいること。できあいって、出来合いの総菜の出来合いじゃなくて、溺れる愛のほう」
溺愛。そんな言葉は無縁で生きてきたし、これからもないと思っていた。もちろん、いずれは誰かと結婚して赤ちゃんを産んで、我が子を大切にするという意味の溺愛はあるだろうと想像はしていたけど。
赤ちゃんと私と、その隣には……橘さん。
きゅうっと胸が痛くなる。昨日橘さんと会ったから余計に思い出してしまう。何があっても紬を手放すべきじゃなかったなんて。
トントンと背中をあやすように叩かれ、雅さんは外へと私を促した。待たせていたタクシーに乗り込み、都内のホテルに向かう。方向が違うから今日は一番星は見えなかった。