【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
流れる景色を黙って眺める。橘さんがもし、私のところにもどってきたら……。彼女がひとりで赤ちゃんを育てると言ったら。もし堕胎すると言ったら。私は橘さんと結婚できるんたろうか。
……ダメ。考えたくない。
「あきらめが悪いな」
「え?」
「タチバナのこと、考えてたんだろう?」
私を見つめる雅さんの瞳はどこか憂いがあって、でもどこか怒っているようだった。黙っていると魂を吸い取られてしまいそうで私は話題を変えた。
「あの、聞いていいですか? 鳳の会って」
「父の仲間うちが20年前から始めた起業家の懇親会だ。メンバーの会社は商社や物流業、農業関係者、医療、教育と多岐に渡る。だいたいは引退して会長職にいるが、最近はその二世も参加して交流をはかっている」
「そんな会合に私がいて大丈夫なんでしょうか」
「俺のそばにいればいい。会長って言ってもその辺の年配者と変わらない。ただ……」
「ただ?」
「縁談がね。仕事絡みの縁談は一度会えば紹介してくれた知り合いの顔も立つ。それは女性側も同じだ。ビジネスの一環だから」
「つまり、今回は普通に断れないってことですか?」
その質問に雅さんは答えなかった。沈黙は肯定っていうから、断れなくて困っているのか、それとも逆に断りたくないのに断らなくてはいけない事情があって困っているのか、どっちにも取れる。
……ダメ。考えたくない。
「あきらめが悪いな」
「え?」
「タチバナのこと、考えてたんだろう?」
私を見つめる雅さんの瞳はどこか憂いがあって、でもどこか怒っているようだった。黙っていると魂を吸い取られてしまいそうで私は話題を変えた。
「あの、聞いていいですか? 鳳の会って」
「父の仲間うちが20年前から始めた起業家の懇親会だ。メンバーの会社は商社や物流業、農業関係者、医療、教育と多岐に渡る。だいたいは引退して会長職にいるが、最近はその二世も参加して交流をはかっている」
「そんな会合に私がいて大丈夫なんでしょうか」
「俺のそばにいればいい。会長って言ってもその辺の年配者と変わらない。ただ……」
「ただ?」
「縁談がね。仕事絡みの縁談は一度会えば紹介してくれた知り合いの顔も立つ。それは女性側も同じだ。ビジネスの一環だから」
「つまり、今回は普通に断れないってことですか?」
その質問に雅さんは答えなかった。沈黙は肯定っていうから、断れなくて困っているのか、それとも逆に断りたくないのに断らなくてはいけない事情があって困っているのか、どっちにも取れる。