【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
その名前に心がうずく。
私は手元から視線をあげて雅さんを見た。きつい雰囲気だ。
「まだ2週間ですよ」
「もう2週間だ。昨日、なにを言われたんだ」
「そんなことどうでもいいじゃないですか」
「質問に答えてない。なんて言われたんだ?」
真っ直ぐに射抜くような瞳に体が萎縮する。唇すらも動かない。
さらにきつく睨まれて、私は口を開いた。
「……何があっても紬を手放すんじゃなかった、って」
「そんな言葉で揺れてるのか」
「だって」
「だとしてどうする? 相手は妊娠しているんだろう? 新しい命はどうなる?」
私は雅さんの視線から逃れたくて手元に視線をもどし、カウンター内で水を注いだ。電磁プレートにかけ、スイッチを押す。橘さんのことは考えたくない。考えてもしょうがないことだから頭の中から排除したい。パッケージを開けてドリップ式のフィルターを取り出す。
香ばしいコーヒー豆の香りに混じってイランイランの匂いが鼻を突く。私の足の横に彼の靴が見えた。いつの間にか隣に雅さんが隣に立っていた。怖い形相で私を見下ろしている。いつになく威圧的だ。言葉づかいも表情も。
「答えろよ、質問に」
「た、例えば養育費を払って責任をとるってこともできるじゃないですか」
「選択肢としてはそれもあるだろう。でも実際にタチバナとキミが稼いだお金でその母子を養っていけるのか? キミたちだって子は設けるつもりだろう?」
それが現実的でないことははわかっている。堕胎を勧める立場でないこともそれが卑怯であることも。彼に返事をしたくなくて無言でコーヒーの用意を進める。
視界の片隅で彼のつま先がかたかたと音を鳴らしていた。
私は手元から視線をあげて雅さんを見た。きつい雰囲気だ。
「まだ2週間ですよ」
「もう2週間だ。昨日、なにを言われたんだ」
「そんなことどうでもいいじゃないですか」
「質問に答えてない。なんて言われたんだ?」
真っ直ぐに射抜くような瞳に体が萎縮する。唇すらも動かない。
さらにきつく睨まれて、私は口を開いた。
「……何があっても紬を手放すんじゃなかった、って」
「そんな言葉で揺れてるのか」
「だって」
「だとしてどうする? 相手は妊娠しているんだろう? 新しい命はどうなる?」
私は雅さんの視線から逃れたくて手元に視線をもどし、カウンター内で水を注いだ。電磁プレートにかけ、スイッチを押す。橘さんのことは考えたくない。考えてもしょうがないことだから頭の中から排除したい。パッケージを開けてドリップ式のフィルターを取り出す。
香ばしいコーヒー豆の香りに混じってイランイランの匂いが鼻を突く。私の足の横に彼の靴が見えた。いつの間にか隣に雅さんが隣に立っていた。怖い形相で私を見下ろしている。いつになく威圧的だ。言葉づかいも表情も。
「答えろよ、質問に」
「た、例えば養育費を払って責任をとるってこともできるじゃないですか」
「選択肢としてはそれもあるだろう。でも実際にタチバナとキミが稼いだお金でその母子を養っていけるのか? キミたちだって子は設けるつもりだろう?」
それが現実的でないことははわかっている。堕胎を勧める立場でないこともそれが卑怯であることも。彼に返事をしたくなくて無言でコーヒーの用意を進める。
視界の片隅で彼のつま先がかたかたと音を鳴らしていた。