【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
「管理って。そんなことする必要なんか……」
「どうしてですか?」


偽の婚約者だから、とは言えずに口ごもる。とりあえず話を合わせておかないと、他の社員に知られたら大変だ。

泥酔した女を引っ掛けて、やって、証拠を押さえて脅して、仮の婚約者に仕立て上げた……なんて雅さんの経歴に泥を塗るわけにはいかない。


「で、今日もなにか予定があるの?」
「おっ、藍本さま、従順になられましたねっ! 本日は午後に雅副社長と新居のご相談をしていただきます! 藍本さまは一戸建てとマンション、どちらを希望されますか?」
「え?」
「おふたりの結婚生活をスタートされる記念すべき場所ですよ。あと18時に雅副社長御用達のブティックからデザイナーが採寸にお見えになります。カクテルドレスの発注とウェディングドレスのデザインの相談です」


私は絶句した。偽の婚約者にドレスの発注?

カクテルドレスはともかくもウェディングドレスだなんて作ってどうするの? それに新居って。うちの会社は不動産業だからそんなのを用意するのもいらなくなって処分するのもたやすいけれど。


「それで午後、副社長室にお越しください! ではっ」


唐澤さんは90度のお辞儀をしてエレベーターに乗った。


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