【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
「雅副社長は所用がございまして、本日は唐澤がエスコートさせていただきます!」


今日は雅さんに会えないんだと思うと、一気に気持ちが下がった。路肩に停められていたのは三國不動産のロゴと社名が入った白の軽自動車。唐澤さんはスマートに助手席のドアを開けた。

意外にも唐澤さんの運転は優しかった。乗り心地は雅さんのセダンとは比べものにはならないけれど、落ち着いて乗っていられた。あのハイテンション声ならもっとジェットコースター並みの上下躍動感を想像していたのに。軽自動車なのに揺れも少なく、ブレーキングもなめらかだ。

車はどんどん都心から離れて郊外に向かう。景色もビル街から商店街、住宅街、そして田畑や里山も見えてきた。穏やかな運転に穏やかな景色。

運転って性格が出るっていうから、唐澤さんはもしかして内面は繊細なひとだったりして。


着きましたーっ!、という唐澤さんの声に目の前を見ると、広い洋風庭園に煉瓦のレトロな洋館がひっそりと佇んでいる。お姫様でも出てきそうな雰囲気だ。

車を降りて洋館の中に入る。正面中央にウェディングドレスとタキシードを着たトルソーが立っている。キラキラと輝き、ダウンライトに照らされて鮮やかに光を反射させる。うわぁ、と思わず声が漏れた。

お気に召しましたか、とドレスの裏から声がした。白いシャツに黒のパンツスタイルの黒髪ショートカットの40代と思われる女性が出てきた。メジャーを長いネックレスの用に巻き、キビキビした動作で私たちの前に来た。

彼女はこのお店のオーナー兼デザイナーで、以前から雅さんのスーツを仕立てているとか。あの欧風なデザインのスーツは彼女の作品らしい。
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