【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
「いかにも一流ホテルのご令嬢って雰囲気でしたね」
「副社長とお似合いだったなあ」
「しっ、聞こえるよ」


見学って何時頃?、とたずねるとお昼前だったという。ならさっき見かけたのはあの2人だろう。



*―*―*

自宅に帰ってひとりになりたくなくて、私はオフィスに残った。
開発部のフロアは私だけ。腕時計を見れば23時を過ぎている。

自宅にいてもオフィスにいてもひとり、か。意味ないじゃん、でも仕事があるだけマシかもね。

そんなことを呟きながらモニターを眺めていた。

誘致を考えている歯科医院のプロモーション動画が終わって画面が暗くなる。そこに疲れている自分の顔がうっすらと映った。

みっともない顔。惨めだ。

彼氏にフラれ、泥酔して記憶をなくした夜に見知らぬ男と寝て、その男にそそのかされて婚約者の真似事をして、なんの連絡もなくフラれて。

28歳にもなって何をしているんだろう。


そのとき、背後になにかの気配を感じた。

オフィスのドアが音を立てて閉まる。
閉まる……?
閉まるというとは開いてたの?

カタ、カタ、カタ。堅いフロアを打ち鳴らす靴の音。
ただならぬ人の気配に私は身構えた。
誰なのか確認したいけど振り返るのが怖い。

足音がだんだんこちらに近づいてくる。
お金目当ての犯行とか? それとも性的な暴力とか?

怖い。
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