チェンジ! ~僕に恋して君を愛する~
「結婚して最初の6年くらい、あの人は飯場を渡り歩いて稼いだお金をうちに送ってくれてたの。だから、結婚はしたけど別居してたようなものだった。私は入籍しても両親の家に住んでたし。それがお互いにとって好都合だったのよね。私が環の世話に専念する傍ら、エステティシャンになる勉強をして。環が小学校に入学するのを機に、私たちは中之条の団地に引っ越して、あの人も時々だけど家に寄るようになった。それでも私は応じなかったから――それも入籍するときの条件――浮気とか、好きにしてたみたいね」
「・・・やっぱり複雑で特殊な夫婦関係だったんだなぁ」
「契約みたいなものよ。お互いを縛り合うような。もうあんな結婚生活は二度としたくないわ」
「そっか。そうだよな」
「あなたは?」
「え?僕?」
「そう。あなたはお医者さんだったんでしょう?」
「うん。実は、僕の父が院長、母が理事を務めている病院に、僕は勤めてたんだ。そんな環境で育ったせいか、医者になることは当たり前というか・・それが自然だと思ってた。現に弟も医者だし、医者になること以外、僕に職業の選択肢はなかった」

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