チェンジ! ~僕に恋して君を愛する~
僕にとって「夜」は拷問に等しい。
寝る前、僕は風呂場やトイレに篭って、凶暴な「コブラ」を、自らの手で・・・発散させてから、ようやく寝ることにしている。
部屋は1つしかない。だが布団は2組敷いた。
それだけで部屋は一杯になったが、「できるだけ寝室は別」という時子さんの希望に、僕は沿いたい。

最初の頃、時子さんはもちろん、僕に近づこうともしなかった。
だが日が経つにつれて、少しずつ話しをするようになった。きっと暗闇の中だったら、いろんなことや不安な気持ちを安心して吐き出すことができるのかもしれない。
これも時子さんが僕のことを信頼し始めている兆しだ。
証拠に、5月の半ばごろには、少しずつではあるが、寝る時の距離も縮まってきたような気がする。

思いきって僕は時子さんに「抱きしめて寝てもいい?」と聞いてみたら、時子さんは僕に背を向けたまま「・・うん」と答えてくれた。
そう答えることは、時子さんにとって相当勇気が必要だったに違いない。
声もか細く聞こえたし、時子さんがいつも以上に小さく華奢に見える。

僕は、これ以上時子さんを怯えさせないようにと心がけながら、時子さんをそっと抱きしめた。

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