君を、何度でも。
【悠生side】



無機質な機械音。白い病室。

ほんの少し前まで目を細めた青い空は、もう二度と見れない。眠ってばかりになった頃から、気づいていた。



「…………ないで、…………
………いかないで、ハル……」




握られた手が、温かい。もう少しも握り返すことが出来ないのに。

最期まで寄り添ってくれた温もりに、なにか返したいのに。


「悠生……」


呼んでる声に返事をしたい。聴こえていると教えてあげたい。



桃奈。

世話ばっかりかけてごめん。幼馴染みなのに、最期までその頃のことを思い出せなくてごめん。

叔母さん。

息子なんかじゃない俺を、こんな身体になってからも捨てずに育ててくれた。なんにも返せなくてごめんなさい。

ああ、まだ………伝えたいことがたくさんあるのに。




ふわ、と身体が軽くなった。


羽が生えるようなその感覚が、何故か懐かしく感じるんだ。



人生最後の瞬間は、酷く幸せだった。


あんなに苦しかった胸も息も、ふわふわと軽くなって。

不思議なことに俺は、ひさしぶりに生きているような気がしたんだ。













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