君を、何度でも。









「…………ル、…ハル」



名前を、呼ばれている。



蝉の声がする。

肌にじりじりと熱い空気がまとわりつく。



ぐらぐらと、脳みそをかき混ぜられているような感覚に、うっと吐き気がしてようやく瞼を持ち上げた。


空だ。太陽。

あまりに眩しくて、くしゃりと目を細めた。



「ねぇ、ハルってば!」



突然鼓膜を刺激したのは、聞きなれた声と、半ば暴力的に強く掴まれた肩。

その勢いに、とうに動かなくなったはずの両足が一、二歩後退した。そのまま足が縺れ、自分のものとは思えない身体が後ろ向きに傾いた。


「え、ちょっとハル?!」


それを間一髪で抱き支えた白い手のひらは、間違いなくさっきまで自分の手の中にあったものだった。

頭が真っ白になった。


だって、目の前にいるのは、ついさっき死に別れたはずの幼馴染みだ。



「ハル、平気?どっか具合悪い?」


心配そうな顔して、桃奈は俺の顔を覗きこんだ。


いやいやいや。

どっか具合悪い、なんて可愛いいものでは無かったと思う。

自分はついさっき大病に侵され、息を引き取ったのだから。


「も、桃奈…俺」


声が震えたが、そんなことより声が出ることに驚いて、息が詰まる。


目が見える。体が動く。声が出る。
俺は確かに生きている。

何が起きた?
何がどうなった?
これは、夢の中なのか?



あたりを見渡すと、そこは学校の体育館だった。近くにいたのは桃奈だけではなく、クラスで仲の良かった敦と駿斗が怪訝そうに俺の顔を覗きこんでいた。

「なあ桃奈、悠生どうしたん?」

「わかんない……ハル大丈夫?ふらふらしてるし…。熱中症かなあ」

そう言いながら桃奈は心配そうな面持ちで俺の背を摩る。どうやら心配をかけたらしい。それはいけない。俺は桃奈に心配をかけるのが、本当に嫌なんだ。


「だ、大丈夫!考え事してたんだ」

「ほんとうに?しんどくない?」


もう一度冷静に周りを見渡す。

ここは体育館。駿斗の手にはバスケットボール。俺は体操着を着ている。時計を見れば時刻は四時。どうやら今は、部活動の時間のようだ。

そうか、俺はバスケ部だったんだっけか。それで桃奈はマネージャー。ようやく現状は掴めてきたぞ。


「まじで大丈夫。それ」
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