隣の殺人鬼




「青木主任、実は聞きたかったことがあるんですけど・・。」


「なに?」


「ニシダ製作所との事、前からご存知だったんですか?」


「どうして?」


「特別チーム発足の話があってから、ここまで凄く手際よくやられているので。

俺や他のメンバーへの指示もすごく的確で・・いきなり言われてやれる事ではないような・・。」




「・・・松岡主任には内緒にしてね。」


青木さんは持っていた弁当を置くと、緑茶を一口飲む。


「営業部と先方との商談に、私も前から参加していたの。

ほら私、月に何回か外出や出張に出ることがあったでしょ?

あの時は小泉部長や磯村課長の指示で、

営製管理の代表として、営業部の人達と一緒にニシダ製作所へ行ってたんだ。」



「そうだったんですね。」


「その流れで特別チームの話が舞い込んできたって感じかな。」



「・・・・ハハハハ。」


「どうしたの?」


「いえ。大丈夫です。
青木主任の出張の謎が解けてよかったです。」


「え・・どういうこと?」


「いや、怒らないでくださいよ。

青木主任が、

“社長の愛人で、
出張と偽って社長に会いに行ってる”

なんて変な噂を聞いたことがあったので。」



「なるほど・・。
だから私が出張に行く時、一部の人達が変な目で私を見ていたってわけね。」


青木さんが俺をじ~っと見つめる。


「待ってください!
僕は最初から信じてませんでしたから!」


「フフッ。ありがと。」




“社長の愛人疑惑”を主張する松岡主任にもこの事実を教えてあげたいけど、

それはそれで青木さんが営業部と一緒にニシダ製作所へ行っていたことに対して、

“俺を抜け駆けにして!”
って騒ぎを起こしそうだな。

あ~~じれったい!






「よし、じゃあ続きを始めますか。」

「はい。」


コンビニ袋に空になった弁当箱2つを入れ、作業を再開する。



< 106 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop