隣の殺人鬼




「最後に私からもいいですか?」


あらかた先方からの質問が出尽くし、そろそろ終わろうかという時に、

ついに最後方に座る西田社長が手を挙げられた。


「御社は1年前、

業界内では画期的と言われた“α”から“β”への構成部品変更を行ったと伺いました。

この“β”について2、3お伺いしたいことがあります。」



・・・・来た!



西田社長は見た目とは裏腹に、とても物腰柔らかい口調で質問をするが、

その目の鋭さはハンパなかった。




西田社長の質問に営業部の人が答える。

更にまた西田社長が質問を重ねる。


何回かのラリーの後、

西田社長の口から俺が今朝までに仕上げた資料に該当する質問が飛んできた。




「はい。“β”を生産しているのは石神工業という弊社の下請け業者になります。

この辺りにつきましては弊社 営製管理部の鳥越よりご説明申し上げます。」



予告通り、営業部の横山さんからパスが回ってきた。



マイクを受け取ると席を立ち、今朝作った資料をスクリーンに映し出す。




「はい。“β”を生産している石神工業は・・・・・。」





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「鳥越、石神工業行くぞ。」

「今日もですか?」

「当たり前だろ。部品統括部が部品作ってる会社に行かなくてどうするんだよ。」

「しかし、昨日行った時には特にやることもなく・・。」

「いいか鳥越。何かあってから俺達が行ってるようじゃ遅いんだよ。」

「分かりました。」

「お前はまだ分からないかもしれないけどな。

今俺達が担当しているこの件は、銅収堂の未来に繋がる大事な案件なんだ。

この経験は絶対にお前の会社人生にも繋がるんだから。

目隠ししてでも石神工業を歩き回れるぐらいになれよ。」

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