隣の殺人鬼
「妻に似てとても美人になった・・。」
一瞬空気が止まる。
・・・・社長から言い出した場合はどうするの佐竹さん!?
何か話題を変えようと模索していたところで社長が水割りを一口飲む。
「無駄に気が利く佐竹のことだ。
聞かされてるんだろう?」
「・・・はい。」
「私も父も、娘の誕生をとても喜んだ。
だけど妻は“男の子じゃなくてごめんなさい”と言い続けた。
2人目はなかなか出来なくてね、
どんどん年齢だけが重なっていった。
気付けば36歳、ノゾミは8歳になっていた。」
「まだまだお若いのに・・。」
「今でも不思議なんだ。
なんで自殺しようとしたのか。
妻が道路に飛び込む数日前に久しぶりに夫婦2人で食事をした。
その時に、
“ノゾミには自分がやりたいと思った仕事をさせる”
“僕の次の社長は甥っ子に継がせる”
と事前に父と決めた事を伝えたんだ。
“だからこれからは次の子供の事は考えず、僕の妻、ノゾミの母として最期の時まで寄り添って欲しい”
と本音を伝えた。
妻は肩の荷が下りたような、清々しい笑顔を見せてくれたよ。
あの夜は久しぶりに恋人時代に戻った気がした。
それからは生き生きとしていたと思っていたけど・・・・全て私の責任だね。」