隣の殺人鬼




スーパーの閉店時間が迫っていたので俺も階段へ向かう。



「こんばんは。」


「・・・・・・」



・・あれ?

すれ違いざまに俺の嗅覚が、ある匂いを捉えた。


「肉じゃがですか?牛丼?」

振り返って202号室さんを見る。

その手に持っていた紙袋からうっすら良い匂いが立ちこめた。



「・・・・・・・」



・・・え!?


202号室の人は、紙袋を持っていた手と逆の手を自らの耳に伸ばす。

ゆっくりとマスクを外すその動きは、

怪談話で出てくる、
“ワタシ・・・キレイ?”
を彷彿とさせる。





「・・・・・・」

マスクを取った202号室の人はもの凄く微妙にコクンと頷いた。


「匂いで分かります。
美味しいですよそれは。」


「・・・・・」


202号室さんは自分の部屋へと入っていった。




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