隣の殺人鬼
――――――
「鳥越。」
「はい。」
田中課長に呼ばれて席を立つ。
「引っ越しはもう済んだのか?」
「はい。昨日は休暇を頂きありがとうございました。
この3連休で全て完了しました。」
「そうか良かった。ちょっといいか?」
田中課長に連れられて、フロアの隅にある小会議室へ入った。
「どうされたんですか?」
「実はな・・・。」
田中課長がいつにもなく真剣な顔つきをしている・・・。
一体なんだ!?。
「人事部からお前の異動の通達が来た。」
「えぇ!!い、いつからですか?どこに?」
「4月1日付けで営製管理部だ。
あと3ヶ月ぐらいしかないが引き継ぎは大丈夫か?」
「営製管理部!?あそこに僕がですか?」
「お前もよく分かっていると思うが営製管理部はうちの会社の花形だ。
つまり、会社はお前の入社以来の実績を高く評価しているってことだ。」
「それは課長のご指導あってのことです。
僕なんかが・・・。」
「鳥越、お前は仕事もよく出来るし人柄も申し分ない。
今じゃすっかりうちのムードメーカーだしな。
出来ればお前が主任に上がるまでは面倒見たかったけど、営製管理部で成果を出せば絶対にお前のキャリアに繋がる。」
「・・・分かりました。」
「俺もお前と同じ高卒入社組だ。
ここまで来るのに相当な苦労をした。
いいか!向こうに行っても大卒の連中なんかに負けるなよ。」
「はい!」
田中課長と一緒に小会議室を出る。
入社して最初のラッキーはこの人の元で働けたことだ。
時には厳しく、時には優しく。
アルバイトしか経験が無かった俺に、社会人としての在り方を教えてくれたのは田中課長だった。
この人の元を離れるのは寂しいけど・・・
まさか俺が営製管理部なんて・・・。