甘い初恋は、イケナイ最後の恋。
スタッフ専用の出入り口から出れば、少し先で待っていたのは放課後に再会したばかりのひーくんこと大(ヒロ)お兄ちゃん。
あの時はバイトがあったから話ができなくて、電話番号を交換してそのままLINEにも登録して「バイトが終わったら迎えに行くよ」と言われて別れた。
「ひーくん!」
私が呼びかけると俯いていたひーくんは顔を上げて微笑んでくれた。
私は慌ててひーくんに駆け寄って両手でひーくんの両手を包むように握った。
「ごめんね、ずっと待たせちゃって……
春とはいえ寒かったでしょ?こんなに手冷たい」
ひーくんの手をさすって温める。
こうやっても小さい私の手じゃ、大きいひーくんの手はなかなか温まらない。
ふっ
「…ひーくん?」
ひーくんの笑った声が聞こえたと思って顔を上げた瞬間、ひーくんは私の手を握った。
「じゃあ、ゆあであっためて?」
繋いだ手を見せるように上に上げて、嬉しそうに笑うひーくん。
何だか恥ずかしかったけど、私も嬉しくてこの手は離さずにひーくんと歩き出した。