甘い初恋は、イケナイ最後の恋。
明子が再々婚していた事実に大は頭がついていかない。
明子は幸せそうに笑っている。
では結愛は?
大は結愛と再会した時に一度だけ家族の話をしたが、結愛が無理して笑っているのは気付いていた。
心の底から笑っていなかった。
明子は苦笑いをしていた表情から一変して、憂いを帯びた表情でマグカップを指でなぞる。
「…結愛は三度目の再婚で、私達から遠ざかるようになったわ。
最初は『よかったね、お母さん』って喜んでくれてると思ってた。
でも学さんとの子供が産まれてから、バイトをしたいって言い出して掛け持ちでバイトをするようになったの。
無理してないって聞いても『大丈夫だよ!お母さんは心配しすぎ』って笑うだけで。
段々帰ってくるのも遅くなってきて、夕飯を作り置きしておいても食べてないし。
昔のように素直に言わなくなってしまったわ」
「夕飯はいつもバイト先の賄い食ってたよ。
店長がゆあが一番よく食べるんだって言ってた」
「……そうだったのね。
昔は結愛のこと分かってたのに、もう何も分からなくなってしまったのね。情けない母親だわ」
明子は眉をひそめて悲しそうに笑った。