甘い初恋は、イケナイ最後の恋。
学校へ行く支度を終えて階段を降りると、足音を聞いてお母さんがリビングから出てきた。
お母さんをチラッと見てから玄関へ向かう。
靴を履きながら背後にいるお母さんに声をかける。
「今日もバイトだけど……あんまり賄い食べずに帰るから、夕飯作っておいてくれる?」
靴を履いて振り返ると、お母さんは少し目を見開いて私を見ていた。
「えぇ。作っておくわ」
でもやがて笑って頷いてくれた。
お母さんが笑うところ、久しぶりに見た気がする。
私にも笑ってくれて、夕飯も作ってくれて嬉しいな。
家族もいいかもしれない。
孤独なんかよりずっとずっと暖かい。
私は笑顔で行ってきますと言って家を出た。