甘い初恋は、イケナイ最後の恋。
傘を買って差していこうなんて考えすら思いつかなくて、土砂降りの雨の中何も考えずただ足だけを目的地に向かうために動かす。
目的地に着いたら寒さからか恐怖からか分からないけど震える手を伸ばしてインターホンを押す。
次第にこっちに近づいてくる足音をコンクリートの地面を見つめて聞く。
「…はい…って、ゆあ…なのか?
どうしたんだよ!?こんなに濡れて……!」
あぁ、この声。
私を孤独から見つけて救い出してくれるこの声。
やっぱり私にはここしかなかったよ。
ゆっくりと顔を上げると、心配そうで焦ったような表情をする彼。
ごめんね、そんなに心配させるつもりじゃなかったのに。
「大くん…やっぱりダメだったよ」
「…っ!」
笑える状況じゃないのに必死に笑顔を取り繕う。
するといきなり暖かい腕に引き寄せられて大くんの全身に感じる。
そのぬくもりに雨じゃない雫が目から零れ落ちる。
私は大くんに抱き締められながら何も言わずにただただ泣いた。