ブラックコーヒーが飲めるまで、待って。
先生の顔はとても真剣で、すごく大人の顔だった。
「ちゃんと身の丈に合った恋愛をしろ」
「……それは子どもの私が先生に恋をするなんて、おこがましいって意味ですか?」
10代の恋愛なんて本気じゃないと大人たちはみんな口を揃えて言うけれど、本気じゃないなら、なんでこんなに苦しくなるのか、誰か教えてほしい。
私は、たしかに恋をした。
年上の、しかも学校の先生に。
無謀だって笑われても、かまわない。
それぐらい、この気持ちは本物だから。
先生は私の諦めないって眼差しにガシガシと髪の毛を掻いた。
いつも余裕な先生が見せた初めて取り乱した顔。
「あー、もう、なんなの。お前。調子狂うわ」
そう言ってまた煙草を吸おうとしたけど、それは逃げることだと思いとどまるように手がピタリと止まった。そして……。
「お前は純粋すぎるんだよ。俺はお前に追いかけられるほどの男じゃねーし、過去の恋愛でも結局最後は振られてきた」
「………」
「そうやって見切りをつけるだけの欠点が俺にはいっぱいあるってことだよ」
〝だから俺なんてやめとけ〟私にはそう聞こえた。