ブラックコーヒーが飲めるまで、待って。
恋愛初心者の私とは真逆に、きっと先生は酸いも甘いも知っている。恋愛の楽しさも、難しさも、簡単に関係が終わってしまう瞬間だって、経験してきたのかもしれない。
たしかに私は恋に憧れを抱いている。
少女漫画のような恋愛がしたいし、叶うなら初恋の人と結ばれて一生を添い遂げたいと夢を見てしまっていることは事実。だけど……。
「私だって純粋なんかじゃないです」
先生が女子に囲まれてる姿を見ると、嫉妬で机を投げたくなるし、なにか問題が起きて先生が学校を辞めさせられることになったら、
落ち込んでいるところにつけこんで、私を好きになったらいいのにって、頭の中で汚ないことを考えたこともある。
純粋じゃない。
先生が、ほしくて仕方がない。
「私、先生のことをまだなにも知りません。
……知らないまま、遠い人にならないでください……っ」
まだ、なにも始まってない。
なにも頑張ってないし、なにも諦められないから。
私たちの耳に授業のチャイムが聞こえた。それなのに体が動かなくて、先生も私の目をじっと見つめている。
そして私の熱意に押されるように「はあ……」と、小さなため息をこぼした。