ブラックコーヒーが飲めるまで、待って。
「コーヒーが飲めないヤツには煙草のうまさは分からねーかな」
「コーヒー牛乳なら飲めます」
先生が「ふっ」とバカにしたように笑ったから、私は口を尖らせた。
先生はいつも私を子ども扱いする。
17歳は27歳から見れば子どもかもしれないけど、結婚もできるし、こうして胸がチクリとする恋愛だってする。
「……私、同級生からは大人っぽいって言われます」
あまりはしゃぐのは得意じゃないし、冷静に物事を判断したりすることがあるから、桜井さんは落ち着いてるねって、言われることが多い。
だから好奇心や興味本意で、先生に近づいてくる女子たちとは違うと思われたいけれど、先生から見れば私は大勢の生徒のひとりにすぎない。
「子どもだよ、桜井は」
「どの辺ですか?」
「教えてほしい、なんて口実を作って会いにくるところ」
……やっぱり先生は大人だ。
私の心なんて、簡単に見透かしてしまう。
先生は知っているのだ。
私が、恋をしていることを。
いつも、焦がれるような視線で姿を追ってしまうことを、先生はとっくに気づいていた。