ブラックコーヒーが飲めるまで、待って。
「……私は恋愛対象じゃないですか?」
子ども扱いされたくないのに、声がわずかに震えた。
先生はフーッと煙草の煙をはいたあと、再び吸殻を缶コーヒの中へと入れる。そして……。
「高校生に手を出すほど、女には困ってねえよ」
そうからかうように笑って、私の頭をぽんぽんと2回撫でた。
大人の先生から見れば、私の恋心なんて背伸びをしたい年頃の戯言(たわごと)ぐらいにしか思っていないのかもしれない。
私だって年上の人に興味があったわけじゃないし、もし友達が10歳も上の人と付き合ってたら『騙されてない?大丈夫?』って不安になる。
そのぐらい私はとても冷静で、恋に恋なんてしない現実主義者。
そんな私がまさか一目惚れでこんなにも想いをこじらせてしまうなんて、自分自身にビックリしている。
先生なんて口は悪いし、絶対に学生時代なんて女の子をもて余すほど遊んできたに違いない。
絶対に面倒くさそうな趣味とかありそうだし、彼女よりも友達を優先しそうだし。
だから、大人の人への憧れの気持ちが強くて、無条件に胸がときめいてしまっただけだって、
そんな軽い気持ちだけで割り切れたら、どんなに楽だったかな。
私はいつの間に、こんなにも先生のことを好きになってしまったんだろう。