男の娘。~絶対秘密の女装アイドル~
親父の口からその言葉を聞けた事で、少し

ずつ心の中にあった疑念が晴れていく。

「大体な、小学生の子供を同情だけで育て

る事なんてムリに決まってるだろ。お前を本

気でうちの子にしたいと思ったから養子に

したんだ」

そう・・・だったのか。

今、やっと気づいた事がある。

俺達に足りなかったのは、お互いの気持ち

を伝え合う事。親子のコミュニケーション

だった。

ずっと、こんな簡単な事に気づかないで誤

解してただなんて・・・

ようやく抱擁が解かれると、目が合ってお互

いに吹き出した。こんなに笑顔で親父と向

き合ったのは随分久しぶりだ。大切な事に

気づかず俺達はどれだけの時間をムダにし

てきたのだろう。

「俺、仕事よりもお前が大事だって事にや

っと気づいた。気づくのが遅かったら、瑞

希を失っていたかもしれないな」

親父はもう普段の明るい親父に戻ってい

る。やっぱり親父はこの方が親父らしい。

みんなから慕われる親父が俺の誇りだか

ら。
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