男の娘。~絶対秘密の女装アイドル~
「えっ!?」

突然の出来事に対応しきれず、よける間も

なくその誰かにぶつかった。


「チッ・・・」


うわ、最悪だ。

勢い余って相手が俺を押し倒す体勢にな

る。いわゆる床ドン。舌打ちされただけで

も最悪なのに、そいつはよりにもよって俺の

大嫌いなヤツだった。

「どこ見て歩いてんだよ。ちゃんと前見

ろ」

ぶつかった相手の正体───

こいつは若手イケメン俳優の滝口輝(たき

ぐちひかる)。高い演技力と端正なルック

スで今最も旬な芸能人の一人と言える。

「だ、大体!輝がぶつかってくるのが悪いん

じゃん」

「ふん、年下のクセに偉そうだな」

輝はサッと立ち上がると俺に手をさしのべ

る事もなく腕組みをして見下ろしてくる。

「偉そうで結構だよ。そっちこそ、ブレイ

クしてるからって偉くなっちゃって」

確かに俺は輝より年下だ。

俺は15歳、それに対して輝は19歳。しかし

デビュー時期が同じという事で今では犬猿

の仲になっている。
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