男の娘。~絶対秘密の女装アイドル~
「・・・おい、瑞希。起きろ。着いたぞ」

うっすらと目を開ける。おじさんが俺に必

死で声を掛けてきている。どうやら俺は途

中で寝てしまったらしく、気づけばホテル

に到着していた。

「ん・・・今、何時?」

「・・・10時15分。ロビーの奥にある大宴

会場が会見場だからな」

ああ、やっぱり遅刻したんだ・・・

俺は重い気分で車を降りる。ホテルのすぐ

目の前に車が停まっていたので入り口を抜け

ればロビーがあった。やはり貸し切りにし

ているのか受け付けには誰もいない。

「おじさん、来ないの?」

おじさんは車の側に立ったままついて来な

い。こんな時に一人だと正直不安だ。

「一人で行ってこい。俺はスマホのテレビ

で会見の様子見てるから。たまには勇気出

せよ」

俺はおじさんに背中を押されて決心した。

正直、1歩踏み出す事が精一杯ですぐにでも

倒れてしまいそうなほど気持ち悪かった。

だけどここで勇気を出さなければ。輝の為

にも。自分の為にも。


ゆっくりと歩いている内に受け付けのすぐ

隣にある大きい扉の前に辿り着いた。


やっとここまで来た。ここが会見の場所。

俺が舞花として最後の仕事を全うする戦場

だ。
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