極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~
かけられた魔法
心地よい初夏の風に、揺れた髪を手で抑える。
待ち合わせの公園内には、ちらほらとカップルの姿があり、なんだか落ち着かない。
自分もこれから男性と食事に行く。しかも憧れていた男性と。
これってデートっていうのかな……。
今更そんなことを思い、自分で緊張を高めてしまう。
「ホテルロビーで待ち合わせじゃ、何かつまらないな、だって職場だろ」
そう言って、紘平はホテルの隣にある大きな海浜公園での待ち合わせを指定してきた。
職場の仲間の目もあるので、そのほうがみのりにも都合が良かった。
ホテルフロントで紘平と待ち合わせて出かけたら、明日の出勤で仲間たちから質問攻めになることは避けられない。
しかし。
つまらないってどういう意味だろう。
紘平的に、もっとときめきや盛り上がりが欲しいということだろうか。
まさかね、と思った時、目の前に大きな外車が現れた。
目立つ車体の運転席から紘平が軽く手を挙げた。
サングラスをしていたせいか、一瞬誰か分からずみのりは戸惑う。
目立つ車も嫌味なくらいに彼に似合っている。
まるで映画に出てくる俳優のようだった。
長い脚がするりと運転席から出て来た。
すぐに反対側に回り、助手席のドアを開ける。
「お待たせ、乗って」
こんなふうに自然にエスコート出来るのは、きっと女性とデートし慣れているせいだろう。
その所作は、公園や道行く人の視線を一瞬にして集めた。
こんな注目には慣れていないみのりの方は、お辞儀を繰り返しながら、そそくさと助手席に身を滑らせた。