極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~
「大学の先輩相手に何を緊張するんだ」
「それは……」
自覚がない。
彼は不思議そうな顔でみのりを見つめた。
きっとこんなふうに注目を集めることに慣れているせいもあるだろう。
紘平の周りにはいつも尊敬と羨望の眼差しがある。
私なんかが一緒に食事をしていいのかと、気後れしてしまう。
「先輩はみんなの憧れだったので……」
「みんな」という言葉で、自分の想いを埋もれさせる。
本気で付き合いたかった、とか、そういうものではないというごまかしもあった。
こんなタイミングで長年の告白をしたところで、紘平に引かれてしまうのが怖かった。
今はただ、楽しく素敵な時間を過ごしたい。
しかし紘平の反応は意外だった。
「……みんな?」
「はい、少なくとも私の友達は全員」
深く頷いて、ワインに手を伸ばす。すると、
「ということは、篠田も?」
「……っ」
その言葉に驚いて、指先がワイングラスを引っかける。
咄嗟に紘平が手を伸ばし、グラスを支えた。
「あ……ありがとうございます」
危うく倒しそうになったグラスを持とうとする。
そのとき、彼の指がみのりの指に触れた。
それは偶然ではなく。
紘平はみのりの指先を軽く握り、まっすぐに見つめてくる。
「みんなじゃなくて、いいんだけど」
指先を絡め合ったまま、不意にそんなことを囁かれた。