極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~
オーダーは君



「失礼します」


 控えめなノックに「どうぞ」と応じた伊崎の声は落ち着いていた。
 
 みのりはワゴンをそっと押しながら、ミーティングルームに入る。
 
 室内には伊崎の会社のスタッフが各々ノートパソコンを開いている。


「じゃあ、ここはもっと具体的に提示していきますか」
「視覚的に訴えるものが欲しいな、商品絡めて」
 
 紘平はパソコンの画面を眺めながら、淡々と答える。

 今日はブランドスーツに身を包み、さりげなく眼鏡をかけていた。
 
 それが嫌味なく爽やかにきまっていて、みのりは思わず見とれてしまった。
 

 クライアントへのプレゼンを一週間後に控え、司を始め、紘平の部下が続々とホテルに集合した。
 
 泊まり込みでの準備は、着々と進んでいるらしい。
 
 時折こうしてミーティングの合間に差し入れを頼まれ、みのりが持ってくる。
 
 そこには真剣そのものの紘平と部下たちの姿があった。
 

 再会ディナーデートの後からの紘平は、社長そのものだった。
 
 たまにラウンジで見かけても、誰かと打ち合わせをしているか、1人でパソコンに向かっていた。
 
 紘平のひたむきな仕事ぶりに、みのりは感心していた。


 その姿は大学時代の真っ直ぐな彼と重なる、と密かに心をときめかせていた。
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