極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~
カタカタとキーを打つ紘平に見とれていると、
「やっほ」
端に座っていた司が、軽くみのりに手を振った。
こんな真剣な空気の中でも、司はいつもと同じく軽やかテンションを保っている。
みのりははっとしてお辞儀をする。
紘平に見とれていたのがバレたのではないかと、気まずくなった。
しかし司の方は、すぐに片手で頬杖をつき欠伸をこぼした。
ミーティングは退屈だ、そんなことを今にも言い出しそうな顔。
面白い企画出してくる部下、と伊崎から聞いていたが、こういう場面では、あまり真面目な方ではないのかもしれない。
「司、堂々と欠伸をするな」
「あれ、バレちゃいました?」
思い切りつまらないアピールをしていたのによく言う、とみのりは失笑した。
「だってさっきから、同じ部分で詰まってるじゃないですか。方向性を変えないと」
ばっさり切り捨てた司を凝視するスタッフたち。
こんなことをはっきり言って空気が悪くならないだろうかと、少し心配していると。
「確かにな」
紘平はメガネを外すと、溜息をこぼす。
「一息入れよう」
そう言って、みのりが運んできたコーヒーに手を伸ばした。
「そうしましょ」
司はそう言うとスマホ片手に部屋を出て行った。
「ったく……女に電話したかっただけじゃないのかあいつは」
同僚はしかし、そんな司の態度には慣れているらしく笑っていた。
もしかしたらこういう重たい空気を変えるキャラなのかもしれない。
気まずい空気にならなくてよかった、とみのりは胸をなでおろし、
「何か必要なものがあれば、いつでもコンシェルジュデスクまで連絡ください」と一礼し退室した。