極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~
国体が終われば、先輩たちは引退だ。
先輩も進学に向けて受験勉強に入るだろう。
そうなったら、なかなか顔を合わせることもなくなってしまう。
この二年間、毎日のように部活で顔を合わせてきたのに。
それもなくなるのだ。
そう思ったら、急に切なくなり、合宿が終わる寂しさに1人浸っていた。
立ち止まり、星々を見つめる。
来年、この星空を見るときは、伊崎先輩はいない。
現実的になってきた別れに、みのりは大きく息を吐き出した。
「後悔だけはしないようにね」
ふと成美の言葉が、頭をよぎった。
今思えば、後悔だらけかもしれない。
紘平がみていてくれる間に、自己ベストを出したかった。
ハードルだってきちんと飛べるように戻りたかった。
そして……。
自信を付けた自分で……ちゃんと告白したかった。
今の自分の状態では、とても無理だけれど。
結果を残せるようになったら、紘平の近くに行ける。
そしたら私のような後輩でも、紘平は目に留めてくれるのではないか。
もしかしたら気持ちも告げられるのではないか。
そう思って頑張って来たのに。
「それが……ますます自信なくすなんて、ね」
ぽつりとそう呟いた時だった。
「何を無くしたんだ」
「え……」
振り向くとそこには、紘平が立っていた。
「伊崎先輩……っ」
みのりは驚いて、手を口に当てる。
独り言を聞かれてしまった、と顔を赤くした。
「先輩どうしたんですか、打ち上げは?」
「抜けて来た、どうも悪乗りになってきたから」
参った、というように紘平は笑う。
月明りに照らされて笑う紘平の顔が素敵だと、みのりは胸を疼かせる。
「篠田こそどうしたんだ、無くした、とか言ってたけど」
「あ、いえ……何でもないです」
ただ風に当たりたくて、と付け足すと、紘平はまた優しく笑う。
「綺麗だよな」
星を見つめて紘平が囁いた。
紘平と2人きりで星を見つめている。
それだけで胸が破裂しそうだった。